自動入札ツールの3つの課題(とりあえずの初動仮説)
今日は、
とあるツールベンダーさんとお会いして四方山話をしてきた。
非常に頭がキレて人柄のよい人たちばかりなので、
会話もとても楽しいものだった。
Yahoo! リスティング広告、Googleアドワーズにおける、
最適化ツール(主に自動入札と、アラート)についての話が出たので、
それについての初動仮説をまとめておく。
キーワード広告(PPC)において、
CPA(顧客獲得コスト)を基準に最適化をするなら、
もっとも日常的に行う機会が多いのは、
もちろんキーワードの入札単価の上下である。
問題となるのは、
管理するキーワード数(あるいは広告グループ数)が数千、数万と増えたり、
競合の入札の上げ下げが激しく、コンバージョン数をある一定数獲得する目的で、
検索結果の順位を高く保とうとすることが毎日(あるいは数時間に一度)チェックして入札額を上下させていると、
それに応じて人的コストも増えるということ。
要するに労働集約的な仕事が増えること、である。
そこで、
CPAが高すぎる場合に入札額を下げたり、
ある一定の掲載順位を保つために入札額を上げたり、
ということをプログラムに自動的にやってもらおう、
というのが、
自動入札ツールである。
これはヤフーもGoogleも広告システムのAPIを提供しているので、
日本でも様々なツールがすでに存在する。
基本の思想は、
入札額を上下する判断は、
ある程度は定量的(数値)にルール設定ができるので、
そのルール通りに動かす、
ということになる。
たとえば、
CPAを5千円に設定しているところ、
5千円を超えてしまったら、
入札額を○%下げる、
とか、
掲載順位が4位以下になっってしまったら、
入札額を○%あげる、
という具合である。
数値ならコンピューターはなんでも扱えるので、
現実に可能である。
こういったことをルール設定をしたら、
後はプログラムが勝手に動かして、
最適なコンバージョン数とCPAが獲得できるならば、
こんなありがたい話はないのだが、
現実的な課題はもちろん存在する。
それは、
「定性的(知覚)な判断をどうするのか」
という課題である。
たとえば、
「あるキーワードのCPAが高いのか低いのか」
という判断には、
統計有意性を持たせようとするならば、
(数値だけの正しさだけで判断するなら)
少なくとも800件~千件のクリック数が必要である。
(※ちなみに、
コンバージョン率1%のCPAで入札額を決定する場合、
仮に1万件のクリック数があったとしても、
誤差10%以内に抑えて信頼水準95%を維持することはできない)
ただし、
現実の問題として、
これだけのクリック数がたまるキーワードというのは、
極めて少ない。
月間べースでいえば、
仮にクリック率1%だとすれば、
千件のクリック数を生むためには、
10万件のインプレッション数があるキーワードとなってしまう。
特に月間広告予算規模200万円以下の中小企業のような場合、
10万件規模の検索数のビッグキーワードがアカウントの中に10個以上あり、かつ1%以上のクリック率があるというケースは、希だろう。
たいていのビジネスシーンにおいては、
プログラムで動かせる定量的(数値)な判断を待っていられないので、
定性的(知覚)な判断を加えることで、迅速に行動し、
キーワード広告の最適化は行われることになる。
「このキーワードは、
検索する人の属性はマッチしてるけど、ライバルが強いので、
クリック数はまだ150件だけど、
CPA基準値をすでに超えてるから入札額は下げておいた方がいいな」
という感じである。
そういう意味では、
なかなかクリック数がたまらないけど、
キーワードの入札単価が高いキーワードについては、
そもそも自動入札はさせることができないことになる。
あるいは、
「管理画面(API)以外の情報の判断をどうするのか」
という課題もある。
前述のような、
インプレッションが10万件以上あって、
1%以上のクリック率が出るようなビックキーワードの場合、
定量だけではなく、むしろ定性的な判断で、
入札額を上下させるアクションをすることは頻繁に起こる。
例えば、
「あの競合の下の順位になりたくない」
というケースである。
ビッグキーワードは市場の象徴だから、
たとえCPAが悪化しても、特定のライバルに負けたくない、
という広告主は多い。
こういう情報は、
当然APIから取れる平均掲載順位ではわからない情報だから、
ルール化はできない。
さらには、
「人的コストと、ツールのコストはどちらが高いか」
という課題もある。
現在の日本では、
ブルーワーカー的な仕事の賃金レベルは確実に落ちている。
また、
勤務時間に制約はあるものの、
子育中の人などは、
高い賃金でなくても優秀な人材はすごく多い。
こういった人に、
「アラート、監視」をしてもらった方が費用的に見合うのでは、
という考えは当然存在する。
ある特定のキーワード100個が、
ファーストページビットに引っかかって、
どれか表示されなくなっていないか確認する、
といった作業である。
この程度の作業なら、
1時間もあればできてしまうので、
「人による仕組み化」
をしてしまった方が効率がよい、
という考えは当然あるだろう。
こういった課題の仮説を立てつつ、
自動入札ツールを、
とりあえずは一部導入してみるつもりである。