復活キーワードアドバイスツールに意味はあるか?
Yahoo!リスティング広告(旧オーバーチュア)で、
キーワードアドバイスツールが復活するそうである。
※キーワードアドバイスツール=
ざっくり言うと、ヤフーの検索キーワードの月間検索数がわかるツール、
のことである。
ヤフービジネスIDを取得すれば、
誰でも見れる。
ヤフービジネスIDとは
http://help.yahoo.co.jp/help/jp/bizmanager/bizmanager-11.html
●過去のキーワードアドバイスツールが与えたもの
さて、
キーワードアドバイスツールというものには、
私も少なからず感慨深いものはある。
「検索されるキーワードは”需要”であり、
検索結果で表示されるテキストリンクは”供給”である。
だから、検索エンジンとは、
(ヤフーやGoogleだけではなくすべての検索窓を備えたサイトは)
文字言語の流通によって成り立つ”市場”である」
と私は定義し、
「1億稼ぐ検索キーワードの見つけ方」
という本を2004年に構想し、
2005年に執筆、
2006年に公開した。
この本は、
キーワードアドバイスツールがあったから書けた。
検索結果における広告がクリックされる確率、
および、
ホームページでコンバージョンする確率、
は、
ある一定の範囲で必ずおさまるので、
その仮定値を検索数と掛けあわせれば、
コンバージョン数は事前に予測可能だ。
これに客単価をかけあわせれば売上は算出されるし、
クリック数とクリック単価も予測できるのだから、
コストも算出できる。
つまり、
「”言語の流通量”と”客単価”を掛けあわせたものが、検索市場の経済規模であり、
競合度合いはクリック単価に現れて利益率も予測できる」
ということが、
かなりの高い確率で、
事前の予測と、実際の広告効果を比較することで、
実証できることがわかった。
そのストーリーを書いたのが、
「1億~」本である。
キーワードアドバイスツールは、
その後2007年に消滅した。
・サーバー負荷
・ビッグキーワードへの広告の集中
などの課題があったためだろう。
当時は、
「キーワードアドバイスツールがなくなってしまって、
どうやって検索エンジンマーケティングをするのか?」
と業界は騒然としたが、
結果的には、なくてもそんなに困らない、
ということがわかってしまった。
過去のデータでいくら予測値をつくったとしても、
所詮は机上の論理であるし、
小難しい議論に時間をかけるのなら、
ある程度のテスト予算を持って、
さまざまな試行錯誤をした方が、
はるかにビジネスによい影響を与えることは、
どんな広告市場でも同じだからだ。
検索キーワード連動型広告、
というものが、
いったいどういうものなのかわからない時代には、
キーワードアドバイスツールはきわめて有用であり、
その予測にも大いに意味があった、
というだけのことである。
●復活キーワードアドバイスツールに意味はあるか?
さて、
キーワードアドバイスツールであるが、
復活することに、
「大きな意味があるか?」
と問われれば、
私は、
「たして意味はない」
といわざるを得ない。
理由は以下の3つである。
ひとつは、
現代の検索キーワードマーケティングにおいて、
ツールで、
「単体キーワードの月間検索数を事前に知る」
「複合キーワードの候補を知る」
ことの意味が、
きわめて薄れてしまっている、
という事実である。
「実際に検索されるキーワード」
が、API経由で取得ができて、
さらにGoogleアドワーズの管理画面で「実際の検索クエリ」で取得ができ、
かつコンバージョンに与える影響までわかる現在では、
検索キーワードは、
「選択する」
のではなく、
「抽出して網羅する」
ものに変化してしまった。
検索数の規模にかかわらず、
広告を出してしまい、
その結果から検証する方が、
効率的になったわけである。
検索ユーザーは年々「検索慣れ」しており、
「単体のビッグキーワード」
が完全一致で検索されることの重要性は、
どんどん低下している。
※検索クエリー数は、毎年30~40%の割合で上昇しているといわれている。
おおざっぱな検索ではなく、
ピンポイントのロングテールキーワードが毎年増えている、
ということ。
「実際に検索されている細かなキーワード」
を網羅してアカウントを構築し、
実際のクエリを日々の運用で追加していく。
こういったルーチンの方が、
はるかに精度が高くなっているわけである。
この方法論が可能になったのは、
Googleの広告グループの作成が、
5万まで拡大されたことが一番大きな要因だ。
つまり、
1キーワード1広告グループ
の設定を、
5万キーワードまで広げられることができるため、
「検索数の規模」
といった指標で、「選択」する必要がなくなっている、
ということなのである。
ふたつめは、
「月間検索数として表示される数字が、
実際に予測や経営判断に使うことにあまり意味がない」
という点である。
Googleのキーワードツールの数字が、
実際のインプレッション数とはかなり違う、
という経験はだれにでもあるはずだ。
過去のキーワードアドバイスツールも、
「桁」
こそ違わないものの、
5万件なのか、8万件なのか、
という点では、
かなりの違いはあった。
その検索キーワードの検索数は、
毎月一定ではないし、
季節変動もあるし、
リアルの言葉の流行、
というファクターもある。
新聞や雑誌のように、
「配布数」
があらかじめ決まっているわけではないのだから、
これは変化して当然なのだ。
実際に、
キーワード広告の「アカウント構築」や、
「運用」の現場では、
「万なのか、千なのか、百なのか」
という「桁」の感覚さえ間違えなければ、
ほとんど問題はない。
検索キーワードの検索規模として、
「トイプードル」が万単位で、
「トイプードル ブリーダー」が千単位で、
「トイプードル レッド 特徴」が百未満だろう、
というだいたいの予測は、
誰にでも可能だろう。
こういった感覚はキーワード広告の運用に、
半年もかかわっていれば誰でも身につけられる。
むしろ、
「検索数」
というものに必要以上に縛られて、
機会損失を生んでしまったり、余計な期待をするより、
よいことの方が多いかもしれない。
みっつ目は、
そもそも、
「検索キーワード」
の定義がそもそも難しくなった、
という点である。
当然だが、
検索キーワードには、
「完全一致」
「部分一致」
という異なった概念がある。
そして、
「部分一致」は、
Googleもヤフーも、
「拡張解釈」
をしている。
※「チューリップ」に広告を出していたら、
「花」にも出てしまう、ということ。
さらには、
ひとりのお客さんは、たったひとつのキーワードだけを検索するのではなく、
複数の検索キーワードを検索し、
比較し、
コンバージョンするようになっている。
こういった「明確な定義」そのものが難しくなったことで、
「検索キーワードの検索数と候補」
がツールで出てくることに、
あまり意味が見いだせなくなっていることは、
誰しもが感じていることなのではないだろうか。
検索の市場は、
大きく変わってしまった。
現在では、
キーワードアドバイスツールで出てくる数字が、
5年前のように、
重要な意味を持つとは考えにくいのである。
●なぜ、今キーワードアドバイスツールなのか?
9月16日には、
Googleが「広告の文字数を大幅に増加」させる、
と発表した。
そして、
今月には、このヤフーの動きである。
なんだが、
急に「大盤振る舞い」をはじめた、
プロバイダーだが、
なんでこんなに動きが活発かといえば、
もちろん、
「日本の独占禁止法下のヤフーとGoogleの提携」
という複雑な事情があるから、だ。
今、
検索エンジン市場を動かしているキーワードは、
「ヤフーとGoogleの提携」
と、
「独占禁止法」、
それに
「公正取引委員会」、
である。
今後しばらくは、
こういった、
「プロバイダ側の急激なサービス向上」
の動きは、
続くだろう。
広告主にとってはよいことだが、
いつまでも続くわけではないのでご用心を。
このへんの込み入った事情は、
次回のブログででも書いてみようと思います。