スペンサーシリーズ「スクールデイズ」。冬の夜長に異色の探偵小説を。
ロバートBパーカーの最新作、
「スクールデイズ」
を読んだ。
小説を、
まともに最初から最後まで飛ばさずに読んだのは、
起業をした2003年以降はじめてかもしれない。
名作だった。
パーカーの著書は、
探偵小説としてのハードボイルドの側面を失わず、
なおかつ、
モダンな現代社会を描き切っている点が、
なにしろ素晴らしい。
本作は、
17歳の少年が学校で乱射殺人事件を起こし、
その背後にある「理由」をひたすらに主人公のスペンサーが追い続ける、
というある意味とっても地味で異色の探偵小説だ。
しかし、
これが面白いのだ。
不幸な境遇の少年の心に焦点を当て、
男としてのプライドを軸にして救おうとするストーリーは、
1980年の永遠の名著、
「初秋」
を彷彿とさせる。
また、
明らかに有罪である独りの人間を、
「そうではないのかもしれない」
と信じて、
ラストに向かって真実を明らかにしていく過程は、
「12人の怒れる男たち」
のような静かな感動がある。
辣腕の女弁護士リタから、
「なぜたった一人の少年にだけ肩入れするのか?」
という痛い質問をされたスペンサーの答えは、
現代情報化社会に生きる私たちすべてにとって、
重要な言葉だろう。
「あなたはよく知りもしないこの少年に、
ずいぶんこだわってる。
まるで自分の息子みたいに。
でももう一方の少年にはまるで興味を示さない」
「救いが必要な人間は何千といる。
おれは全員を救うことはできない。
それどころか、救おうとした人間の半分も救えない」
「あなたは全員を救うことはできない」
「全員を救おうとすれば、結局ひとりも救えなくなる」
「そしてひとりを救うことは、誰も救わないよりいい」
そして、
恋人スーザンとの会話も、
粋である。
「チャンスがない子どもたちは大勢いる。そう思わない?」
「きみもおれも、そうやって燃えかすのようになった大人を、
毎日見ている」
「しっかりした大人になるのに絶対かかせないものがひとつあるとしたら、
それはタフであることね」
「おれたちのように」
燃えかすのような大人になりたくない、
すべての人たちに、
この本をおすすめしたいです。
スペンサーシリーズ 1,000